まちづくり講・交・考 2005


第1回 『地方分権と地方行革−自治体の「腕前」が試される地域づくり−』
           講師 林 宜嗣(よしつぐ)さん (豊中市政研究所理事・関西学院大学経済学部教授)
 

日時

会場
平成17年(2005年)9月29日(月) 18:30 〜 20:30

豊中市中央公民館 3階 視聴覚室


 講演要旨

T. 地方大変革の時代

地方分権や行政改革を考える際、非常に重要なことは、市民の参加を如何にして作り上げていくかである。分権への市民の盛り上がりは、なぜ地方分権が必要なのかを自治体がPR・主張することによってはじめて出てくる。また時代が大きく変わるなか、自治体が国に具体的な課題をぶつけていくことにより、システムが変わる可能性は十分にある。

地方分権一括法により、国と地方の関係が新たな段階に入るなか、国も地方もパターナリズムから脱却し、地域住民の選好を大事にすることが求められている。分配問題についても、結果の平等から機会の平等へ、ナショナルスタンダードからナショナルミニマムへといった議論を国民的に行なわねばならない。また、国も地方も消費主体としてではなく、生産主体として機能することが求められている。

これからは、今までのように国から交付税や補助金がくるという時代ではなく、地方は税源を如何に育てていくかを考えていかねばならない。人口をめぐる都市間競争が激化する中、何故人口が減っているのかといった分析をきちんとせねばならない。それをせずに予想のみで手段を講じるのが、日本の政策のよくないところである。また、一つの手段に複数の目的を詰め込むことも、事業評価等がうまくいかない要因である。

U 地方行財政改革による財源確保

行政サービスを考える際、生産の効率性と配分の効率性という2つの効率性が重要である。また、行政の守備範囲と公共サービスの性質も時代と共に変質しており、本当に時代にあったサービスなのかを客観的に考えないといけない。福祉サービスだから税金でやる、法律にこう書かれているから公費でやる、といった定型的な議論ではなく、むしろ時代にあった議論をしていかねばならない。ときに「行政需要」という言葉を使うことがあるが、経済学でいう「需要」というのは、支払う意思を伴った欲求をさす。しかし行政需要というとき、皆、支払う意思を伴っているのだろうか。需要ではなく、ただの要求ではないか?

財政改革の選択肢の一つとして、個人に対して負担を求めることは重要である。それによってはじめて、負担や支払い意思を伴った欲求となる。日本はできるだけ受益者負担はとらないほうがいいと考えてきた。しかし、行政の守備範囲だからといって、受益者負担を取らない、全て税金で賄わねばならないということでは決してない。また、行政の守備範囲だからといって、直営でなければならないということも決してない。救貧・防貧対策のように、利用者に使う使わないの選択の余地がないサービスは税金ですべきである。だが、生活支援的で選択の余地があるサービスまで全て税金でやるのはおかしい。また、行政サービスであっても民間でできるものは、民間でやるということが重要である。

受益者負担というのは市民にコスト意識を持ってもらうための手段である。そしてそれを、重要な自主財源の一つとして活用していくことが、今後は必要だと考えられる。

以上