講演会      ■日時:2000年10月27日(金) 午後2時〜4時   ■豊中商工会議所

■『介護保険と地方自治』
   〜介護保険は福祉行政をどう変革し、地域経済の活性化をもたらすか〜

■講師  龍谷大学社会学部教授 池田 省三 氏

 本年スタートした介護保険は、10月で6ヶ月になります。そこで介護保険の仕組み(地域の共助システム、サービスの市場化、措置から契約への転換)はど うなっているのでしょうか。介護保険は地方分権の第一歩と位置付けられ、国から権限・財源の委譲により市町村にサービス設計を任されました。このため市町 村は独自で介護の上乗せ、横だしなどを組み合わせることができるようになり、自治体間の競争が生まれています。また、介護の民営化による地域経済への影 響、保険料とサービス水準、介護保険と市町村の役割について講演されました。最後に介護保険の問題点と課題について、その解決策を提起されました。
 今一番ホットなテーマ「介護保険」を皆様と考えてみました。

■講演会の概要

1、介護保険は社会福祉ではなく社会保険
 介護保険は別名「誤解保険」と言われています。それは従来の措置制度の延長上で介護保険を見ているからです。介護保険は社会福祉ではなく、社会保険なの です。社会保障の場合は支援の順序があり、なにか問題が起きればそれを解決しなければならない。その第1は本人の自助努力です。次に、ごく自然に家族や隣 人、友人が手を差し伸べる「互助」が行なわれます。3番目に「共助」という概念で、一定のコミュニティの中でコミュニティの構成員がお互いに助け合うとい うシステムです。欧米では教会から発生した福祉団体がこれに当たりますし、日本では村という農村共同体が一つのコミュニティの中で助け合いをしたという長 い伝統がありました。これが発展して職域での健康保険に、地域の市町村健康保険など自分も参加し、自分もお金を出して支えていく仕組みを作っていったので す。この共助システムでもなお救済できないような大きな問題になったとき、最後に行政の支援「公助」になります。この順序で支援がなされなければならない のです。
2、高齢者介護は3年を超える――家族介護、老老介護は限界
 かつての大家族制度下ではお年寄の介護は家族の役割でした。今では、寝たきり老人の半分が3年(1000日)以上床に臥すよう になり、それを支える家族は核家族化していて、二世帯同居も少ない中、お年寄がお年寄を介護しています。このため自助も互助も限界に来ます。そして高齢者 介護の共助の仕組みがないので、仕方なく社会的入院ということになります。公助=行政の提供する「措置制度」というサービスはありますが、優先順位と予算 の枠があり中間所得階層のところにサービスが行かないという状況が起きてしまったのです。
3、介護保険は共助システムをつくる
 福祉は困っている人を助ける制度ですが、介護保険は国民全員を対象にした制度です。その仕組みは、基本的に大多数を占める中間 所得階層に対して設計されています。しかも介護保険というのは全く新しいシステムであり、今まで欠けていた「共助システム」を作ることなのです。つまり介 護を社会的なサービスで支援することによって、家族の心身の負担が大幅に緩和され、家族が初めて互助の立場に立ち返ることになります。介護保険の基本は、 まず自助力をして、次に互助も共助も不可能の人は、公助でとなっています。介護保険はこのうち40歳以上の全国民が2,900円の保険料を出し合って共助 を行うものです。また、介護保険は自立支援と言われています。自立とは心の自立のことで、自己決定、自己表現、自己実現、そして自己責任が人間の自立の基 礎をなします。
4、介護保険には3つのコンセプト
@介護保険はサービスを創る=行政サービスだけから民間企業、NPO等がサービスを提供できるように拡大された。

A介護保険は物差しを創る=要介護認定、介護報酬の仕組みづくり、どのような状態の人にどんな介護が望ましいかというケア・プランの標準化等。

B介護保険はルールを創る=従来の措置制度と違い、要介護者が主体的な消費者になってサービスを選択し、購入できる。認定に不服があれば介護保険審査会に不服申立てができる。

■主催  豊中市政研究所   ■後援  豊中市