TOYONAKA ビジョン22
第3号 2000年3月リリース
特集 :地域単位の政策―計画―まちづくり 〜地域力の視点から〜
人口増加が都市の成長を示す基本指標とされた量的拡大の都市化時代に終止符が打たれ、少子化社会・高齢化社会の進展を背景としてのふれあいを基本とする生活の質的向上を求める時代を迎えている事実を認識する必要がある。人々の生活様式や価値観が多様化するに従い、より付加的・選択的なサービスが求められ、地域の特性に根ざしたローカリズムの発想がますます重要になってきている。市民に最も身近な自治体は、地域の特色や個性、生活文化を活かした政策立案が求められるが、現在、行財政、都市基盤、環境、教育、福祉などあらゆる面で、変革・改革に向けた取り組みが進められている。
一般に、行政施策は主に個別施策ごとに展開されるが、市民にとっては自分の生活あるいは地域との関連で初めてその個別施策に出会う。これまでの「縦割り」の個別施策は、市民の参画による総合的な施策への転換によって、より市民に理解され、具体的にイメージでき、身近なものになる。
また、多様化する市民生活のニーズは、地域社会で有機的に連関し、あるいは錯綜し、時には互いに相反し合うが、むしろその混沌とした構造をより身近な地域社会で明らかにすることを通して、はじめて、まちづくりの方向や市民・市民組織・地域組織・NPO・企業・行政の役割が鮮明に浮かび上がり、相互の連携と協働のまちづくりへとつながっていくことができると考えるべきである。
核家族化、単身世帯が増えるなか、「個人」や「家族」は都市の中に断片的に存在するだけで、地域社会とのつながりや関係性はこれまであまり顧みられずにきたが、NPO法の成立を待つまでもなく、環境や福祉など地域で発生した問題に対し、その地域に関わる市民がそれをときほぐすために活動が起こされてきてもいる。この活動を新しい都市コミュニティの形成にどのように結びつけることができるのだろうか。
まちづくりは行政だけの仕事ではなく、地域社会に関わる様々な主体による活動の総体であるという意味を込めて、今回の特集テーマのサブ・タイトルにあえて「地域力」という言葉を用いた。まちづくりの視点を地域社会にベースを置きながら、日常生活と関わりの深いいくつかのテーマを重ねあわせ、転換期にある都市自治体のまちづくりの方向を探ってみたい。
■特集テーマ
転換期の地域社会
−都市コミュニティの再定義に向けて−中央大学文学部教授 奥田道大
地域の日常生活を支えるしくみ、
地域福祉と住民(市民)参加大阪府立大学社会福祉学部教授 牧里毎治
地域のまちづくりへ、生活者が求める総合的住環境政策を考える 大阪市住宅供給公社企画開発部
住まい情報センター主査 弘本由香里
住民主体のコミュニティ計画づくり
−21世紀型社会システムとしての可能性−近畿大学理工学部助教授 久 隆浩
地域の教育機能について 大阪大学人間科学部教授 池田 寛 トピックス
地域再生へ向けたコミュニティ・ビジネスの取り組み
〜草の根からのPFIの発信を〜潟qューマンルネッサンス研究所主任研究員 細内信孝
慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程 木村政希
ライフ・ストーリーにみる千里ニュータウン再生の課題 佛教大学社会学部非常勤講師 伊東康子 エッセイ〜豊中に想う〜
女が納税者になることで、夢を 大阪府地方労働委員会労働委員 林 誠子
「わが町」−連なり、競い合う生活・文化単位 甲南大学文学部助教授 井野瀬久美惠