平成10年度(1998年度)の調査研究を終えて
研究報告 「豊中市における地域コミュニティ組織に関する基礎調査」(概要報告)
■問題意識・背景
社会を支える基礎的な単位として、地域コミュニティへの期待が高まっている。ところが、それに対しては漠然とした期待感があるだけで、活動の具体的かつ主体的な実像はこれまで十分に把握されてこなかった。
この調査では、市民活動の必要性や関心の高さを踏まえつつ、地域コミュニティを支える"組織"に注目し、組織運営、活動内容、地域コミュニティとの関わり・連携の様子など、その実態と今後の行政課題について検討した。
■研究体制
■豊中市民の社会的活動への関心 −その現状−
- 研究会:研究委員 井上眞理子氏(大阪女子大学)
研究委員 中川幾郎氏 (帝塚山大学)
上田しのぶ氏(潟Gー・エー・ピー)
- 協 力:豊中市、豊中市社会福祉協議会、
とよなか国際交流協会、市民団体代表者
本市の市民意識調査によると、2割を越える市民が過去、現在において何らかの形でボランティア活動に関わりを持ち、将来的に機会があれば活動をしたいとする市民は6割近くにのぼる。活動の場としては、自治会・婦人団体などの既成の地縁組織よりも、福祉、環境、国際など、テーマの鮮明な活動に対し高い関心がある。
■市民組織の多様性
調査の前段階(昨年9月)では、関係機関の協力をえて、延べ1,600件余りの市民組織を把握することができた。一口に市民組織といっても、法律・制度による行政目的的なものから個人の意志で集まっている草の根的なものまで、その成立用件や目的によっていくつかの分類が可能である。さらに、行政の事務事業からみると、直接・間接に日常業務と関わりのある市民組織も多いことがわかった。
■実態調査
今回は、多様な組織原理を確認しつつ「自発性と非自発性」、「地縁性と脱地縁性」の分類軸を設定し、そのモデルケースとして市民活動団体、自治会町内会に注目した。
その結果、一般的には次のような姿が見えてきた。
【市民活動団体】
高年、女性、作業多様、課題鮮明、拠点・資金不安定
【自治会町内会】
高齢化、男性、作業明確、課題分立、拠点・資金安定(報告書P85参照)
○アンケート…98.10月実施
- 市民活動団体
(送付569団体 有効回答244 回収率 42.8%)- 自治会町内会
(送付100団体 有効回答 70 回収率 70.0%)
○ヒアリング…98.7〜8月実施
6グループの市民活動団体代表者へのインタビュー
○分析にあたって
市民活動団体調査では、'社会参加型組織''活動志向別(分野)'に分類し、活動動態の異なりを確認するとともに、自治会町内会調査では、過去のデータと比較しながら、現在の動向を明らかにしている。
○市民組織の連携の可能性
- 地域の将来課題は、「高齢者福祉」、「安全」など暮らしや生活環境に身近なものに関心が高い。(自治会調査)
- 課題に対し、現在、4割の組織が他の組織と連携して取り組んでいるものの、期待値としては7割が連携すべきであると回答している。(自治会調査)
- 現在のところ連携の相手方は、「自治会・町内会」→他の地縁型組織間、「市民活動団体」→公共施設に集まる組織間が中心という構図になっている。ただし、市民活動団体のうち社会参加型組織は、他の組織との連携度が高くなっている。(市民団体調査)
- 地域コミュニティでこの期待値のギャップを埋めるために、このような市民組織が連携のパートナーとして浮上する局面は、増えるものと考えられる。
■ まとめ
*なお、詳細は「報告書」・「アンケート調査結果」をご覧下さい。
- 地域コミュニティで市民活動のすそ野を広げるためには、行政ジャンルにとらわれず、組織間連携のチャンネルづくりなどが求められる。
- 研究会では、組織の現状や課題をふまえつつ、
を基本方向に、いくつかのメニューを例示した。
- 市民活動支援の制度づくり
- 新しい地域コミュニティの創出
- 既存施策・資源の活用による活動環境づくり
- 個々のメニューには、すでに行政等で取り組みや検討がなされているものもある。その一方で、活動に必要な様々な情報は、行政の縦方向で流れることが多く、実際の活動者や地域レベルで、一元・一覧化されていないという問題がある。
- 行政サポートの検討・実施は、行政と市民組織の関係を問い直す作業でもある。したがって、既存の行政業務に照射される課題も多く、これまでのサポート事業(補助金等)に対する評価やアカウンタビリティの視点が欠かせない。
(本荘)