平成10年度(1998年度)の調査研究を終えて
研究報告 「公会計改革−豊中市への導入試論」
このことについて、調査研究に取り組んだ「公会計研究会」での検討経過の概要をお知らせして、報告に代えます。◆豊中市の行政改革の現状
◆豊中市の財政状況の概要・展望
- 豊中市には、約6,000弱の事務事業がある。市民向けに実施している事業は約2,000事業でその6割(約1,200事業)が10年以上継続している。
◆ 自治体会計制度に発生主義会計を採ることの意義
- 「歳出」は、7・8年度は震災関連で、9年度は新病院開設関連で増加した。
- 「市税収入」は、6年度から特別減税の影響で減少(約50億円)。さらに、震災関連の減免も関係している。9年度は震災減免、特別減税廃止、税制改正(府税→市税)で増加。
- 豊中市財政のネックは、「歳出」の伸びに対して「市税収入」が追いつかないこと(「歳入に占める市税収入」は、全国平均でだいたい30%程度、豊中の場合は50〜60%)。
◆制定法主義国ドイツからの教訓
- 公会計を発生主義会計にすると、恣意的な操作性が縮減する。例えば、「継続性の原則」を採ると、債務償還のための繰入金を停止できなくなるし、出納閉鎖期間は無くなる。
- 「決算」重視、成果重視の予算制度への転換が要請される。
◆ デファクトスタンダードとしてのNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)
- 3年ほど前に「地方自治共同機構」 (KSGt)が画期的な完全発生主義に基づく会計システムを発表し、地方自治体レベルで漸く改革への動きが本格的に広がり出している。
- 日本の場合、地方交付税制度・補助金制度を始めとして、弱小団体優遇の弊害が目立つ。交付税依存の不健全自治体が、計算上の経常収支比率では非常に健全となる。この点が並 行して検討されないと折角の会計制度改革も受け入れられないことになりかねない。
企業会計的手法による豊中市の財務分析(中間的報告)
- NPMの大前提は、行政も「サービス提供機関」なのだという点にある。絶えず競争者が存在し、マーケットがあるということで、市民を「顧客」と捉え、成果(顧客満足度)を重視することになる。
豊中市の一般的な貸借対照表の特徴を平均的なB/S(9市平均)と比較すると、@財政規模に比して保有する資産が小さいA標準的B/Sを持つ自治体と同程度の負債があるという特徴がある。
負債の負担状況は、平均的。貸借対照表の外の債務負担行為予定額まで加味すると、将来的な財政負担度は、9市比較で2番目か3番目に位置する。地方債残高を年度の歳入規模から見ると、かなり抑制している方ではあるが、債務負担行為まで加味するとかなり大きくなる。
【コメント】
豊中のような成熟都市では、かなりの維持管理コストをかけて住民サービスをしているわけだが、その運営コストが適切なものかという観点、受益と負担が適切かどうか、というようなことが次の段階での論点となる。
(室木)