研究中のテーマ
平成12年度

■テーマ

「地域社会に求められる生活支援システムの再構築 〜豊中都心ゾーンを対象に〜


まちの中心で商業を営む商業者に何が期待されているのか?

 今年度の私が担当する自主研究は、豊中都心ゾーンを舞台に、地域社会に求められる生活支援システムについて検討するというものですが、まちの中心で商業を営む商業者がそのシステムの中で期待されることは何か?又はほとんど期待されていないのか?というのが、テーマの核心部です。
 都心ゾーンに隣接する地域の同年代の老若男女グループごとに合計8グループの皆さんにグループインタビューを重ねました。日頃の買物、外出を通して感じていることをざっくばらんに聞かせてもらうというのが趣旨です。
 買い物に全くこだわりのない人、自分の高齢化に備えて10年前から買い物の方法を考えてきた人、中心市街地と近所の商店街と国道沿いの量販店を使い分けている人、まちに全く興味のない人、かつて馴染みであった店に今は行かなくなった理由・・・などなど、様々な考えを聞くことができました。
 大まかにまとめると、商業者に「質の高い商業を目指して欲しい」という意見と、まちの中心で一日中商売をしている商業者に対して、「まちを見守って欲しい」という意見にまとめられそうです。
 その詳しい中身は、近日中に完成予定の報告書にて。
2001.3.29


「中心市街地」は中心でなければならないのか?

 住宅地として成熟した豊中市ですが、都心ゾーンの活力低下は既に認識されています。ところで、都心ゾーンを活性化させる必要性について、その公共性が確認されなければ、この調査研究も前には進みません。
 そこで、自分なりに整理してみました。少しのお時間、お付き合い下さい。
 かつて中心市街地は商業の中心でしたが、今では休日に車で幹線道路沿いの量販店のまとめ買いや、通信販売、宅配などの利用、あるいはいっそ大阪市内まで出るという具合に、駅前商店街での買い物はぐんと減っています。車と電話とインターネットの端末さえあれば駅前商店街など不要だという気さえしてきます。
 「これは時代の趨勢で、市場原理の結果であり、自ら努力している商店はともかく、そうでない商店まで行政が振興策を用意する必要があるのか?」・・・・中心市街地と言えば、駅前商店街を思い浮かべ、中心市街地=商業地、中心市街地活性化=商業活性化と捕らえると、こういう懐疑が当然発生します。
 しかし、中心市街地の多様な側面を考えると、違った考えも浮かびます。
 交通の処理・ターミナル、公共施設の効率性、都市の象徴・文化的(精神的)中心性、アイディンティティー、誇りなど、都市の機能・都市の姿(形態)として都市の中心は必要でしょう。一方で、車や自転車に乗れない高齢者・障害者の人にとって、コンパクトなエリアで生活の用を足せることは重要なことでしょう。日々の生活に直結する個人商店が日常生活圏にあること自体が、子どもの社会勉強にもなります。
 また、集まって住むことによって、移動に要する時間・エネルギー・コストが削減できるでしょうし、人が集積することで商業が競合し、文化的に互いに刺激され、各々の創意工夫・レベルアップが図れ、結果的に生活の水準が向上する。
 こう考えると、中心市街地を活性化させることが都市生活者の好循環を促すと言えます。
・・・・・・かつて、「都心ゾーン地域」では、生活、商業、業務が混在し、互いが互いを必要とし、支え合い、影響しあっていた。都市に市民が集まって住むことの利点は、多様な世代、多様な属性の住民が交わって住むことで都市の活力や相互扶助作用という利点が期待できる。・・・・・
 一昨年の研究報告書で、このように書きました。これは理屈ですが、都心ゾーンに関わる人々が、活性化に向かって、明日からの自分の行動がイメージできるような結果をめざしています。
2001.1.4


中心市街地に何が期待されているのか?

 昨年、一昨年は、都心ゾーン地域と千里ニュータウン地域の住宅の更新と住み替えに関する構造と課題について調査研究しました。(注)
 そこで、今年度はその住宅に住んでいる人の生活に視点をおきます。都心ゾーン地域を対象に、市民が生活する上での様々な局面で、社会や地域とどのように関係を持っているのかという実態把握を通して、現在の「生活のしやすさ」と今後の展望について探ります。
 かつて「都心ゾーン地域」では、生活・商業・業務が混在し、互いが互いを必要とし、支えあい、影響しあっていた。・・・(中略)・・・都市に内包される様々な主体の活動を各々一つのベクトルと考えるならば、都市におけるベクトルの相互作用で成り立っている。もし、それらの中に力が弱まりつつある、消え入りそうなベクトルがあるとすれば、その活力の回復が求められる。その前提として、都市を構成するベクトルの状態を丁寧に把握しておく必要がある。
 ・・・一昨年の研究報告書の序章でこのように書きました。昨年、一昨年の調査研究が住宅の更新と住み替えのベクトルを探ったとすれば、今年度は生活のつながりというベクトルを探る作業です。
 都心ゾーンで暮らす人々が、自分の生活をどのように成り立たせているか、生活のどこの部分をどこに頼っているか、近年、「セーフティ・ネット」という言葉がよく聞かれますが、どこにも頼れずに抜け落ちている部分はないか・・・。改善の余地、需用と供給の組み合わせ、などについてケーススタディを行ないます。
 そこでの「登場人物」は、住民はもちろん、地域の様々な活動団体、個人商店、量販店、企業、行政など、多岐にわたることでしょう。その意味では、「中心市街地に何が期待されているのか」を探る作業であるとも言えます。

注)詳細は研究報告書、又は11月13日開催予定の市政研セミナーにて
2000.9.21



■問題意識
 豊中市は成熟期を迎え、住宅を中心とした市街地の更新が課題であるとともに、人口減少と少子・高齢化が進行している。この問題意識の下、昨年、一昨年に住宅の変化と家族・居住者の変化について、「都心ゾーン」地域と千里ニュータウン地域を中心に調査した結果、住宅分野での構造と課題は一定の認識を得た。
 今年度は、市民が生活する上での様々な局面で社会や地域とどのように関係を持っているかという点についての実態把握を通して、現在の「生活のしやすさ」と今後の展望を探る。
■ねらい
 今年度取り組む「生活のしやすさ」というテーマは、昨年、一昨年と取り組んだ住宅・居住環境分野とともに、居住地選択の際(特に市民が住みつづけるか否かを選択する際)のもう一方の大きなテーマであると考える。
 具体的には、生活をどのように成り立たせているか、生活のどこの部分をどこに頼っているか、どこにも頼れずに抜け落ちている部分はないか、改善の余地、需要と供給の組み合わせ方などについて、都心ゾーン地域を対象にケーススタディをする。
 成熟した都市において、既存の社会資源をいかに有効に機能させる、あるいは機能を再構築させるかという視点から取り組みたい。
■研究方法
 ヒアリング、グループインタビューなど
2000.7.14