TOYONAKA ビジョン22


第6号 2003年4月リリース

特集 子どもと大人 孤立から新しいつながりへ


 虐待、いじめ、非行など子どもに関するニュースがマスコミで報道されない日はないといってもいいでしょう。学校、地域社会、家庭で子どもと接している人たちから、今の子どもを取り巻く環境について様々な警告を発している声を見聞きします。昔に比べて、物質的な豊かさは増したものの、なにか殺伐としている今の状況は子どもにとって決して好ましい状況と言えません。
 子ども社会は大人社会の縮図と言われます。今のような状況をつくってきたのは、私たち大人自身ではないでしょうか。核家族化が進み、近所づきあいの密度も薄くなり、多くの親が家庭以外の場所で働いている現在、大人は昔自分も子どもだったのに子どもの考えていることが分からないし、分かろうとしなくなっています。子どもは子どもで、大人の背中が見えず、信頼できる大人が周りにいないので、心を開けないまま、お互いに孤立していて、その孤立した状態が周囲からも見えにくいという状況があります。また、大人同士、子ども同士の関わり方それぞれが希薄なものになっているようです。直接的なコミュニケーションに代わってIT技術により情報化社会が進んでいますが、その情報を処理する人間自体は変わっていないため、かえって情報にまどわされる事態も起こっています。そして子どもも大人も、自信を持てずになにかに依存し、管理されることに安住している面もあるようです。
 今回の特集では子どもをテーマに取り上げ、「孤立から新しいつながりへ」をキーワードにしてみました。学校、地域社会、家庭で子どもも大人も様々な問題を背負い込んで悪循環に陥っているようにみえるからです。そのことを多くの人が自覚していて、さかんに「地域社会でのネットワークの再構築」「子育て・子育ち支援体制の社会化」「関係機関同士の連携」「大人と子どものパートナーシップ」といったことが叫ばれはじめていますが、掛け声だけに終わっている場合も多いようです。社会環境が変わった今、昔と同様な近所づきあいや家族関係を復活させても、今の時代にはそぐわない面もあるでしょう。大人と子どもが孤立するのを防ぎ、お互いが心を開き、皆で責任を負う新しいしくみを現在の社会でつくっていくには、どうすればいいのか考えました。
 子どもと大人が孤立している現状や、その孤立から抜け出し新しいつながりをつくるため豊中内外で様々な活動している人や、子ども自身の意見などを紹介したこの機関誌が、子どもに関係する職業についている人やいない人、子どもを育てている人やいない人、子ども好きの人や子ども嫌いの人などの間で、様々な議論や模索のきっかけとなることを願っています。

●子どもをめぐる問題を考える
藤井泰雄 池田子ども家庭センター地域育成課長兼家庭支援課長
●家庭に代わる児童養護施設の子育て 阪本博寿 清心寮 副施設長
●いま、子どもは大人社会をどう思っているのか 明日理加
上田哲郎
小山順子
柴山理央
「障害」をもつ仲間と共に歩む豊中若者の集い
●地域の中で子育ての助け合いをコーディネートする現場から 新谷榮見子
高島初美
別所佳子
(財)豊中市福祉公社
とよなかファミリー・サポート・センター アドバイザー
●大人自身が変ることからはじめよう」 水谷徳子 泉丘公民分館副分館長
●育児休業は自分自身を振り返り、人生に一息入れた時間 谷辺浩幸 豊中市役所納税管理課
●いま、子どもたちに必要なこと 新開惟展 元北緑丘小学校校長
●子どもが自分らしく居られて、他者との関係を持てる居場所とは 鈴木毅 大阪大学大学院工学研究科助教授
●親、地域と責任を分け合う学校に 西川信廣 大谷女子大学文学部教育福祉学科教授